海外で働く!?日本語教師の道!

こんにちは、都内の大学で日本語教師をしているオリスです。
皆さんの中には、「将来、海外で働いてみたい」という夢を抱いている方もいることでしょう。グローバル化が進む現在、海外で働く道はたくさんあります。「日本語教師」もそのひとつ。今回は、「海外の日本語教師」に焦点を当ててみましょう。

a.海外に日本語教師はどのくらいいるの?

まずは、海外で日本語を学んでいる人がどのくらいいるかを見てみましょう。2012年度の国際交流基金の調査によると、日本語教育の実施が確認できたのは全世界の136の国と地域で、約399万人が日本語を学んでいるということです。学習者が一番多いのは中国で、2位インドネシア、3位韓国と続きます。全世界の学習者のうち、7割弱はこの3カ国で学んでいるそうです。

それでは、つぎに海外でどのくらいの日本語教師が働いているのかを見てみましょう。同調査によると、日本国外で日本語教師として働く人は6万4000人弱で、そのうち日本語母語話者は23.2%の1万5000人程度だそうです。教師のうち日本語母語話者の割合が一番高い地域は北米で、日本語教師全体の77%が母語話者です。数を見ても、アメリカが3200人あまりで一番多いという結果になっています。なお、この数字は「日本語母語話者」であるかどうかを調べた結果なので、すべての人が日本から派遣された日本人教師だとは限りません。ちなみに、日本語を学んでいる数が一番多い中国では、日本語母語話者の教師の割合は14.2%です。インドネシアや韓国はかなり少なく、どちらも一桁にとどまっています。

このように、日本語を学ぶ人が多い地域と日本語母語話者の教師が多い地域は、必ずしも一致しないことがわかります。一言で“海外”といっても広いので、それぞれの国や地域にどのくらい日本語を学んでいる人がいるのか、教師は何人くらいいるのか、母語話者教師の割合はどのくらいか、なども参考にしながら、“海外で働く”イメージをふくらませてみてくださいね。

参考: 独立行政法人国際交流基金編(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』くろしお出版

b.海外で日本語教師になるには・・・

さて、海外で日本語教師になる道はいくつかありますが、その代表例を見ていきましょう。

JICAボランティア

JICAボランティアは、独立行政法人国際協力機構(JICA)が募集および派遣を行っている発展途上国に向けたボランティア事業です。「青年海外協力隊」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これもJICAボランティアのひとつです。「青年海外協力隊」は20歳~39歳を対象としていますが、JICAボランティアには他にも40歳~69歳を対象とした「シニア海外ボランティア」、中南米の日系社会向けの事業である「日系社会青年ボランティア(20歳~39歳対象)」「日系社会シニア・ボランティア(40歳~69歳対象)」があります。派遣期間は原則2年で、年に2回、春と秋に募集が行われています。
もちろんボランティアですから「給料」という形での賃金は得られませんが、現地での生活費や居住費、渡航費などはすべてJICAが負担してくれるほか、帰国後の就職活動などのための手当ても毎月支給されますので、一般的な“ボランティア”のイメージとは少し違うと言っていいでしょう。
このボランティアの中のひとつに、日本語教師の仕事があります。応募にあたって、たいていは「養成講座420時間修了」「大学または大学院での日本語教育主専攻・副専攻」「日本語教育能力検定試験合格」のいずれかが必須となっています。ほかに、大卒であることや実務経験を必要としている場合もありますが、青年に対する募集のなかには未経験でも応募可能なものもたくさんあるようです。
業務内容としては、現地の小中学校や大学などの教育機関において、すでに赴任している日本人教師や現地の教師とともに、日本語教育を行ったり、日本文化の紹介、スピーチコンテストの実施などをしたりします。
日本語教育は、実務経験が何よりも武器になる世界。どの機関も即戦力を求めているため、未経験者が実務経験を積める舞台はそう多くありません。将来的にずっと海外で日本語教育に携わっていきたい方も、あるいは国内でキャリアアップを考えている方も、金銭的なバックアップがしっかりしているJICAボランティアは有力な選択肢のひとつとなるでしょう。

参考: JICAボランティア ホームページ http://www.jica.go.jp/volunteer/

国際交流基金の派遣

国際交流基金も日本語教師の海外派遣を行っています。特に良く耳にするのは「日本語専門家等」と呼ばれるもので、現地での業務内容によって「日本語上級専門家」「日本語専門家」「日本語指導助手」の3つの派遣形態があります。
経験や資格によってどの形態に応募できるかが異なってきますが、簡単に言うと、「専門家」とつく前者2つは65歳未満で修士号以上の学位を有していることが条件で、経験が10年以上であれば「上級専門家」に、2年以上10年未満であれば「専門家」に応募できます。「指導助手」は35歳未満で四年生大学卒(卒業見込でも可)、「養成講座420時間修了」「大学または大学院での日本語教育主専攻・副専攻」「日本語教育能力検定試験合格」等の日本語教育の基礎的な知識があれば経験がなくても応募が可能です。また、待遇面でも違いがあり、「専門家」の2つは旅費や居住費にくわえて基本報酬や家族がいる場合の手当てなどが出ますが、「指導助手」は旅費や滞在費、居住費のみの支給でそれ以外の報酬はありません。任期はいずれも2年ですが、「専門家」の2つは1年の延長の場合あり、となっています。
ちなみに、「専門家」2つのポストはそこそこありますが、「指導助手」はほとんどありません。よって、この派遣制度は、これから日本語教育の世界に踏み出そうとしている人よりは、ある程度経験を積んだ教師に向いている制度だと言えるでしょう。仕事内容としても、とくに「上級専門家」は現地の小中学校や大学の日本語コースの立ち上げに携わったりするようですから、日本語教師としてのさらなるキャリアアップを目指している人にはとてもやりがいのある仕事といえそうです。

参考: 国際交流基金 ホームページhttps://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/dispatch/
※「日本語専門家の海外派遣」のページへ飛びます

また、国際交流基金内の特別ユニットであるアジアセンターでは、「日本語パートナーズ」という形でASEAN諸国の中高生の日本語学習を支援したり、現地に日本文化を紹介したりする“パートナー”の派遣を行っています。こちらは応募の際に日本語教育歴の有無は問われず、日本国籍を持つ20歳以上69歳未満であれば応募が可能です。ただし、日常英会話が必要となるほか、国によってはビザ取得のために四年制大学在学や卒業が求められることがあります。
任期は派遣先によって異なりますが、おおむね半年から1年以内のようです。待遇は、住居の提供のほか現地滞在費と往復交通費、赴任前後に必要な支度金などが支給されます。
こちらは2014年に始まった新しい制度で知名度としては低いですが、日本語教育に携わったことがない人でも応募ができますので、これから日本語教育の世界に進みたい、どんな世界か知りたい、という人はぜひチャレンジしてみてください。

参考:日本語パートナーズ ホームページ http://jfac.jp/partners/

その他

JICAボランティアと国際交流基金のほかにも、海外に教師を派遣している民間企業はたくさんあります。有給か無給か、費用がどのくらい必要か、などは企業によって違いますし、養成講座と一体型になったプログラムなど様々なものがあるようですので、自分に合ったものを探してみてください。
また、すでに日本語教師として働いた経験のある方は、国内外の求人サイトで直接就職先を探すのも一つの手です。さらに、大学や養成講座に通っていればそこに海外の機関から募集が来ていることもありますし、教授などから就職先を紹介してもらえることもあったりしますので、現在ご自身が所属されている機関でもこまめに情報収集をしてみると、海外で働く道はぐんと広がるでしょう。

c.自分に合ったシゴトを

ここまで、海外で日本語教師になる道についていくつかご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。たくさん情報があって選びきれない、と思うこともあるかもしれませんが、大切なのは「自分に合ったシゴトを見極めること」です。海外への派遣は大抵が単身です。言葉もあまり通じない、慣れない環境で自分ひとりで生きていくのは、多かれ少なかれ身体的・精神的に負担になるでしょう。そのような状況でも、現地の人の役に立ちたい、日本・日本語を好きになってもらいたい、知ってもらいたい、といった強い気持ちを持ちながら仕事をしていけるのか、提示された待遇条件で納得して仕事ができるのか、“海外で働く”ことの自分の中のイメージと仕事が合っているかをしっかりと見極め、与えられた仕事をすることが自分の人生にどのような影響を与えるのかを、じっくり考えて選ぶようにしましょう。

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