日本語教師として「日本語」と向き合おう

こんにちは、都内の大学で日本語教師をしているオリスです。

先日、文化庁より「国語に関する世論調査」の平成27年度の結果が発表されました。「国語に関する世論調査」は、日本人の国語に関する意識や理解の現状について調査しているものです。具体的には、敬意表現や「ら抜き言葉」、慣用句等の意味などについて、全国16歳以上の男女を対象に調査しています。

今回は、この調査の結果をもとに、とくに日本語教師としてどのように現在の日本語に向き合うべきか、学生に質問されたときにどのように対応するべきかについて、考えてみたいと思います。

ちなみに、調査結果の概要は文化庁のホームページ(http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/)から確認することができ、この記事も上記のホームページに掲載されている情報をもとに書いています。

a. 敬意表現・・・敬語は教えるべき?

まずは、敬語についての調査を見てみましょう。
調査では、これからの敬語の在り方について、「新しい時代にふさわしく、敬語は簡単で分かりやすいものであるべきだ」と「敬語は伝統的な美しい日本語として、豊かな表現が大切にされるべきだ」の二つの考え方のどちらに近いかを尋ねています。結果は、「敬語は伝統的な美しい日本語として、豊かな表現が大切にされるべきだ」の考えに近いと回答した人が全体の64.1%にのぼり、「新しい時代にふさわしく、敬語は簡単で分かりやすいものであるべきだ」の26.1%を大きく上回りました。なお、過去の調査と比較すると、「敬語は伝統的な美しい日本語として、豊かな表現が大切にされるべきだ」の考えに近いと回答する人は増加傾向にあるということです。つまり、今ある敬語を大切にしようという考えを持つ日本人が多くなってきている、ということですね。

まずは、敬語についての調査を見てみましょう。
調査では、これからの敬語の在り方について、「新しい時代にふさわしく、敬語は簡単で分かりやすいものであるべきだ」と「敬語は伝統的な美しい日本語として、豊かな表現が大切にされるべきだ」の二つの考え方のどちらに近いかを尋ねています。
結果は、「敬語は伝統的な美しい日本語として、豊かな表現が大切にされるべきだ」の考えに近いと回答した人が全体の64.1%にのぼり、「新しい時代にふさわしく、敬語は簡単で分かりやすいものであるべきだ」の26.1%を大きく上回りました。
なお、過去の調査と比較すると、「敬語は伝統的な美しい日本語として、豊かな表現が大切にされるべきだ」の考えに近いと回答する人は増加傾向にあるということです。つまり、今ある敬語を大切にしようという考えを持つ日本人が多くなってきている、ということですね。

b. ことばの変化・・・先生、「見れる」もいいですか?

次に、「ら抜き言葉」について見てみましょう。
「ら抜き言葉」というワード自体は耳にしたことがある方も多いと思います。「見られる」が「見れる」、「出られる」が「出れる」、「来られる」が「来れる」など、上一段活用や下一段活用、カ行変格活用の動詞の可能形に必要な「ら」の音が抜け落ちてしまっている現象ですね。若者の間から広まった使い方だと言われていますが、今では多くの人が使っているようで、特に「見れる」「出れる」は「見られる」「出られる」よりも使う人が多いという調査結果になっています。

なぜこのような現象が広まっているのかについては諸説ありますし、詳しく説明すると長くなってしまうので割愛しますが、たとえば「出られる」には可能のほかにも尊敬や受け身などの意味があり、それらと区別しやすくなるから広まっているのではないかという見方や、もともと方言として地方で使われていたものが広まった、という見方もあります。
五段活用の動詞もかつては「行かれる」のような形を使っていたのが、次第に変化し現在の「行ける」の形になった、とも言われていますので(いまでも「行かれる」という形があるのはその名残だそうです)、その変化が上一段活用の動詞などにも起こり、広がり始めているという見方もあるようですね。
さて、日本語教育でももちろん可能形は扱います。日本語教育で教える可能形は、今のところまだ「見られる」といった「ら抜き言葉」ではない形です。まだ「ら抜き言葉」は誤った使い方である、という考え方がありますし、「ら抜き言葉」を使えないことが学習者にとって不利益に働くこともそうないので、本来の形を教えることに問題はあまりないでしょう。
しかし、特に日本で生活している学習者は、まわりの日本語母語話者が「ら抜き言葉」を使って話しているのを常に耳にしています。また、日本で生活していなくても、アニメやドラマなどで使われている「ら抜き言葉」を耳にする機会は少なくないでしょう。そうすると、カンのいい学習者は「“見る”の可能形は“見られる”だと習ったのに、“見れる”が使われている、なぜだ?」となるわけです。

問題はここから。「先生、“見られる”は“見れる”でもいいですか」と学習者に質問されたら、なんと答えればいいのでしょうか。
「ら抜き言葉」は、今のところは「誤り」とされているため単純に「いいです」とも答えられませんし、かといって日本語母語話者は使っているため「だめです」とも言いにくいですね。しかし、こういった質問に対しては、「こう答えれば正解」というマニュアルはありません。教師自身が持つ言語観と照らし合わせながら、学習者が日本語を使って生活していくうえで困らないよう、答えてあげればよいと思います。

ちなみに、筆者だったら「“見られる”と“見れる”は同じ“見ることができます”という意味で、“見れる”のほうは特に若い人によく使われますが、使うのはカジュアルな場面だけで、フォーマルな場面では使いません。まだ一般的な使い方ではないですから、“見られる”を使った方がいいですね。」と答えると思います。これは、「ら抜き言葉」を学習者自身が使える必要はないが、聞いたときにそれが可能形と同じものだと認識できること、そして「ら抜き言葉」をフォーマルな場面で使用するのはふさわしくないということを知っておくことは必要だ、と考えているからです。もちろん、学習者の学習歴や学習環境、言語センス、質問の意図などによって、どこまで詳しく話すかなどは変わってきます。

c. ことばは生き物

ここまで、敬語と「ら抜き言葉」について、「国語に関する世論調査」をもとに見てきましたが、いかがでしたか。
今回は日本語教育を中心に見てきましたが、たとえば学校や塾などで日本語母語話者に教える際にも、同じことが言えると思います。
つまり、大事なことは「生活していくうえで、ことばを知らない・使えないことが話者にとって不利益にならないか」ということを常に考えて、指導していくということではないかと思います。
ことばは生き物であり、つねに使う人々の間で変化し続けています。
そして、使う人々の間で、様々な表情を見せるのです。どのようなことばを使えば、自分の思っていることを思っている通りに表現できるのか、そしてそれが思っている通りに伝わるのか、その手助けをしていくのが、「ことばを教える」ということなのではないでしょうか。

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